「くらしフェスタ東京2023 地域企画 八王子会場」は、八王子市と共催で講演会「これが出発点!フードマイレージから考える日本の食料課題」を開催しました。
フードマイレージの考え方を通して、日本の食料課題について私たちが今日から実践できることを、ライター&オンライン講師の藤田まみさんにわかりやすくお話しいただきました。
以下は、講演会の概要です。
講師の藤田まみさん |
環境や社会問題を意識した生活は大変そうと感じたことはありませんか。食育の勉強をすることで、料理や買い物が環境を守ることや世界につながっていることがわかり、やりがいのある毎日を送れるようになりました。みなさんも「未来の地球を救うレスキュー隊」の一員になった気分で参加してください。
安さ、新鮮さ、産地、量、環境や社会にやさしいから、あるいは決め手がない、と迷うかもしれません。みなさんの買い物や食事の一つ一つの選択が未来の地球につながっています。新しい未来を守る買い物の決め手、それは「フードマイレージが小さい」です。
アンケートで「フードマイレージを知っていますか?」と尋ねたところ(回答109人)、知っている13.8%、聞いたことはあるがよくわからない27.5%、知らない58.7%と、知らない人の割合は8割以上でした。それだけフードマイレージは認知度が低い、言い換えれば、知る価値が高いといえます。
フードマイレージは直訳すると、食べもの(フード)の距離(マイレージ)。
食料の輸送量(t)×輸送距離(km)=フードマイレージ(t・km=トンキロメートル)です。
例えば、じゃがいも5tを北海道から輸送した場合、5t×850km=約4250t・km。
アメリカ(ワシントン)から輸送した場合、5t×1万908km=約5万4540t・km。
とフードマイレージが約5万t・km高くなり、環境負荷が大きいことが分かります。
フードマイレージの強みは、食料の輸送が地球環境に与える負担を数値化して把握できることです。
それは輸送で排出される二酸化炭素です。この二酸化炭素の排出量は、国内の輸送より輸入の方が1.87倍多いとされていて、フードマイレージは食料輸送における環境バロメーターになります。
一方、フードマイレージには輸入手段が考慮されないという弱点があります。自動車や飛行機、バス、鉄道それぞれで二酸化炭素の排出量は異なりますが、フードマイレージは同じです。日ごろ環境を守るために「輸送距離が小さいものを選ぼう」と意識するためにフードマイレージを理解しておきましょう。
日本のフードマイレージは韓国、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランスの6か国の中で1番高く(2001年度)、それだけ、普段の食事で環境に負荷がかかっていると言えます。
講師資料より |
それは、食料自給率が低い、輸入が多いという日本の2つの食料課題が大きく関わっています。前向きに考えると、食料自給率を上げて輸入を減らせばフードマイレージが下がって、より環境にやさしい輸送ができると考えられます。
日本の食料自給率は38%(カロリーベース、令和4年度)と世界的に見ても低く、生きていくために必要なエネルギー量が半分も賄えない計算です。政府は令和12年度までにカロリーベースの食料自給率を45%まで引き上げることを目指しています。(食料・農業・農村基本計画より)
輸入に頼りすぎると食料生産が不安定になります。自然災害、異常気象、人口増加などで輸入量が減ったり、ストップしたりするかもしれません。すると物価の高騰や食料不足などの恐れがあります。
最近、値上がりしている小麦粉も食料自給率は13%と低く、将来的に危機的問題になる恐れがあります。世界人口は1987年には50億人でしたが、2022年11月には80億人を突破、2050年は97億人突破と爆発的増加が予測されています。2010年から2050年にかけて必要な世界の食料は1.7倍になるといわれ、中でも穀物は1.7倍、畜産物は1.8倍増加するといわれていて深刻な問題です。このまま輸入に頼りすぎると環境や日本の食卓を守れないかもしれませんが、自分たちに何ができるでしょうか。
未来の地球を守るために、だれでもできる解決法は、選び方、食べ方の工夫をすることです。
フードマイレージが小さい食材を選び、食べる人とつくる人の距離を縮めることです。極論のフードマイレージ0(ゼロ)の自給自足は、現実的にはムリですが、一人ひとりがフードマイレージの小さい食材を選ぶことならできそうです。
レベル1:国産を選ぶ
合言葉は、「おに、米、大しゅき」です。
おに:おにぎり ご飯を1食につきもう一口食べると食料自給率が1%アップします。
米:米粉 米を粉末にしたもので小麦粉の代用品として利用でき、油の吸収率が少なくヘルシーな食材で、食感もカリッとしたりモチッとしたりしてお好み焼きやお菓子作りに利用できます。
大:大豆製品 日本食には欠かせない大豆ですが、食料自給率は7%です。国産大豆100%原料の豆腐を月3丁プラスして食べると食料自給率が1%アップします。原材料名の表示を見て、大豆の産地が日本国内であることを確認してください。
しゅ:旬の野菜 自然の環境で育てやすいため省エネで、栄養価が高くおいしくしかも安い、環境にも体にも家計にもやさしいトリプル食材です。
講師資料より |
レベル2:地産地消
地産地消とはその地域で収穫したものを同じ地域で消費することで、メリットは輸送時の二酸化炭素排出量が少なく、新鮮で安心、地元の農家を応援できるなど、つくる人と食べる人が同じ地域で支えあうことができます。
東京都の食料自給率は0.47%と低いですが、地産地消に興味がないわけではなく、八王子市消費生活センターのアンケート(令和5年調べ)で「地産地消に関心があるか」という質問には、95%の方は関心があると答えています。「地産地消をどの程度実践しているか」という質問には積極的に行っている人は52%で、関心はあるがトライできない人が半分近くいます。その原因の1つ、地元の食材になかなか出会えないという悩みに役立つWEBサイト「とうきょうの恵TOKYO GROWN」があり、地元の野菜や販売店、飲食店が紹介されているので活用してみてください。魅力を再発見し、地元がもっと好きになることができると思います。
レベル3:家庭菜園
フードマイレージゼロの簡単にできる家庭菜園を紹介します。
豆苗 1回切って食べ、そのあと水に浸けておくとまた生えてきて食べられます。
ネギ 5㎝くらい根本を残して水や土に差しておくと緑の部分が生えてきて薬味などに使えます。
葉物野菜 種から挑戦するベビーリーフなど、プランターで窓際に置いておくだけで育つので、初心者にもおすすめで癒しにもなります。
食材をムダにしないこともとても大切です。
日本では1年間に約523万t、つまり東京ドーム約5杯分の食品ロスが発生しています(令和3年度)。食品ロスは食材がもったいない上に、燃焼する際に大量の二酸化炭素を排出し、環境にも悪影響を及ぼします。食品ロスのうち4割は家庭から出るゴミで、国民一人当たり毎日お茶碗1杯分、捨てていることになります。それを半分にしてみませんか。
講演中の様子(講師資料:出典 農林水産省) |
①冷凍保存
新鮮なまま野菜を切って冷凍にすれば、無駄にせずに、料理するときにそのまま使えて便利です。
長ネギやニラなど乾燥に弱いネギ系野菜 使いたいサイズに切って保存容器や袋に入れます。
きのこ類 冷凍することで栄養がパワーアップ。いろいろな種類のきのこを混ぜて袋などに入れ冷凍しておくと、ミックスきのことして使えます。
ほうれん草や小松菜 乾燥とともに栄養価が下がる青菜の野菜。アクがあるほうれん草は熱湯で3分ほど下茹でして水にさらし、水分をふき取って冷凍。小松菜はカットしてほぐれるように袋などに入れ冷凍します。
②エコクッキング
野菜は可食部を捨てずに生ごみ(食品ロス)を減らし、豊富な栄養を取り入れましょう。
ほうれん草:ビタミンCが豊富な旬のほうれん草を赤い根元ごと食べましょう。
ピーマン:実、種、ワタ、すべて食べられ、ピーマンの肉詰めなどは種ごと入れるとおいしいです。
このように、ちょっとした食材の保存や調理の工夫でお金も栄養もムダがなく、おいしい食事を楽しむことができます。少しでも買い物や料理の時の意識が変わったらうれしいです。
以上のように、みなさんが食材を選ぶ時の決め手に「フードマイレージが小さい」が加わっていたらうれしいです。フードマイレージが小さい食品を選ぶことは未来の食を守るSDGsの貢献にもつながります。みなさんで未来を変えるアクションを一緒に楽しみましょう!
・未来の食を守るために、今自分ができること…分かりやすくて良かったです。
・フードマイレージについて、なんとなく知っていると思っていましたが、正しく知ることができました。これからの買い物で、フードマイレージが小さいものを購入するよう心がけます。
・主婦目線での、生活の身近な所からのスタートができる提案が豊か。分かりやすい内容でした。
・フードマイレージが分かりやすく説明されていた。後半は具体的に示されていたので、今日から活用できると思いました。冷凍保存も具体的な種類を知ることができて良かった。
講演会前にフードドライブを実施しました。食品が約60点、約6㎏、他に日用品などが集まり、フードバンク八王子に寄付しました。ご協力いただいた皆さん、ありがとうございました。
フードドライブに集まった食品 |